Sarlota Hohwald
Sune Mortensen
LSEG の最新のリサーチでは、今日のウェルス業界のダイナミクスについて詳しく取り上げ、2024 年以降主要な業界動向を分析することのできる実用的なインサイトを提供します。シリーズ第 4 回目の最終回となる今回は、サステナブル投資 (SI) に関する知識格差に焦点を当てます。
- 「今後 3 年間において投資プロバイダーにどのような変化を望んでいるか」という設問において、回答者の一部は、サステナブル投資に関する知識や情報のニーズを挙げた。
- 投資アドバイザーを利用していない回答者の 3 分の 1 以上が、サステナビリティを投資戦略に組み込んでいない。
- 25 年以上の投資経験を有する回答者の 65% は、今後 3 年間で、ESG 基準がほとんどの投資判断において財務基準と同等の重要性を持つようになると答えた。
ウェルス業界の進化、およびこれが投資アドバイザーや投資家、ウェルス・マネジメント企業、ブローカーなど業界のステークホルダーにおよぼす影響について考察するシリーズの最終回である第 4 回では、SI に関する知識格差に焦点を当てます。
主な調査結果
主な調査結果は以下の通りです。
- サステナブル投資の主な障壁は「知識不足」:
サステナブル投資の障壁についての設問で、投資を妨げる主因として選ばれたのは、サステナブル投資に関する知識不足でした。
この問題は、アドバイザーの利用者と非利用者の両方において指摘されましたが、非利用者にとってはより深刻な問題となっています (アドバイザー利用者の 36% に対して非利用者は 52%)。
今後 3 年間において投資プロバイダーにどのような変化を望んでいるかという設問では、回答者の一部がサステナブル投資に関する知識や情報のニーズを挙げました。
- 投資プロバイダーは全般に、サステナブル投資は今後数年で拡大すると考えている:
投資プロバイダーの 3 分の 2 (66%) は、「サステナブル投資は今後大幅に拡大すると思う」または「ややそう思う」と回答しています。
- アドバイザーの利用者はサステナビリティを考慮する傾向が強い:
アドバイザーを利用していない回答者では、 3 分の 1 以上 (37%) が、サステナビリティを投資戦略に組み込んでいません。
一方、アドバイザーを利用している回答者については、この割合は 24% まで減少します。
- サステナブル投資への現在および将来の投資意欲は投資経験が長いほど高まる:
ESG 投資を行っている割合は、投資経験が 25 年以上の回答者では 15% ですが、この割合は投資経験年数が減少するにつれて減少しています (投資経験 11~25 年の回答者は 13%、6 ~ 10 年の場合は 10%、5 年以下の場合はわずか 8%)。
今後 3 年間に ESG 投資を行う予定があるかという設問でも、同様の傾向が見られ、「投資の予定がある」と回答した割合は、投資経験年数と比例して高くなっています。
サステナブル投資への現在および将来の投資意欲は投資経験の年数に応じて増大
- 投資経験 25 年以上の回答者は、ESG 基準を他の回答者よりも重視している:
「今後 3 年間の投資判断において、ESG 基準は財務基準と同様に重要になるか」という設問では、投資経験 25 年以上の回答者の 65% が「重要になると思う」と答えました。
他の年数カテゴリーでは、その割合は以下の通り減少しています:
53% (投資経験 11 ~ 25 年)
39% (投資経験 6 ~ 10 年)
42% (投資経験 5 年以下)
投資経験 25 年以上の回答者が ESG 基準を最も重視している
より詳細な分析
上記の主要調査結果は、ウェルス業界の企業にとってどのような意味を持つのでしょうか。また、業界関係者にとって、今後サステナブル投資を支持、促進、推進するためにはどうすればいいでしょうか。
知識不足がサステナブル投資の主要な障壁となっていることは、投資アドバイザーと、自主運用型の投資家向けプラットフォームにとって、絶好の機会をもたらします。
サステナブル投資に関するデータと情報へのニーズは、比較的対応しやすいうえ、アドバイザーもプラットフォームも、ESG 投資などカスタマイズされた信頼性の高い助言を通じて、価値提案を差別化できます。
「サステナブル投資は今後大きく拡大するか」という設問では、3 分の 2 のプロバイダーが「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答していることから、投資家が将来サステナブル投資を行うために必要なデータと情報を提供することが、今後の成功の鍵となりそうです。
アドバイザーはすでに、サステナブル投資が助言サービスにおいて分野であることを見極めています。アドバイザーを利用する投資家は、利用しない投資家に比べて、投資判断の際にサステナビリティを考慮する傾向が強いとみられ、このことはサステナブル投資に関する知識不足が、現在アドバイザーを利用していない回答者の間で顕著だったという今回調査結果からも裏付けられています。
アドバイザーの利用者はサステナビリティを考慮する傾向が強い
このことは、自主運用型の投資家向けプラットフォームにとっては、この格差に対処し、サステナブル投資のデータや情報を通じて、信頼できるインサイトを豊富に提供する好機であるといえます。
投資経験が長いほど、サステナブル投資への現在および将来の投資意欲は高まるという調査結果と、投資経験 25 年以上の投資家が、他の投資家よりも ESG 基準を重視しているという事実は、サステナビリティというグローバルな問題を最も不安視しているのは若い投資家 (概して投資経験の浅い投資家) であるという一般的な意見とはまったく対照的です。このことは、年齢や投資経験にかかわらず、あらゆる投資家にサステナブル投資の重要性を周知する絶好の機会が訪れていることを示しています。
これらのインサイトは、ウェルス投資におけるデータの価値と重要性の大きさを明確に指し示しています。ESG をはじめとして、 ある投資分野に関する知識が不足していると、それだけで投資控えにつながります。幸い、デジタル機能とデータ革命を背景に投資環境の再構築が進む現在のウェルス業界の流れの中では、信頼できる情報とインサイトの提供は、かつてないほど容易になっています。
投資判断における ESG 基準のインパクトが増大する今、サステナブル投資について的確な情報を顧客に提供することが、将来的な比較優位につながるといえます。
サステナブル投資にとっての最大の障壁は知識不足
本リサーチについて
本リサーチは ThoughtLab が実施し、全世界規模で 2 種類のアンケート調査を行いました。一方は投資家 2,000 名 (国、資産レベル、年齢、ライフスタイル、職業、性別などの属性は問わない) を対象としたもので、もう一方は投資プロバイダー 250 社の経営幹部を対象としたものです。
主な調査分野には、財務アドバイスの役割の変化、経験が投資家の行動におよぼす影響、投資における AI とその活用に対する姿勢、サステナブル投資分野における格差などが含まれます。
本リサーチは、アジア太平洋、欧州、中東、北米の 4 つの地域をカバーしています。資産レベル別で見ると、最も割合が大きかったグループはマス富裕層 (25%) と富裕層 (25%) で、その次が超富裕層 (18%) でした。年齢別では、X 世代 (31%) のグループが割合として最も多く、次いでベビー・ブーム世代 (30%) が位置しています。
リサーチには、独立系のウェルス・アドバイザー、プライベート・バンク、地方銀行や国際銀行のウェルス・マネジメント部門など、さまざまなウェルス・マネジメント企業 250 社の経営幹部を対象としたベンチマーク調査も含まれています。
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