Paul Charmatz
LSEG がスポンサーとなり行った最新の調査では、今日のウェルス業界に及ぼしている変化に着目し、世界中の回答者から寄せられた見解について考察しています。
- 2023 年、LSEG はウェルス業界における選好の変化と新たなトレンドの理解を深めるために調査を実施しました。
- 世界中の投資家を対象に、ウェルス業界の変化がどのような影響を及ぼしているかについて意見を伺いました。
- 本インサイトは、特にアジア太平洋地域の回答者に多く見られる姿勢と意見について考察しています。
加速するデジタル化は、依然としてウェルス業界の再構築に貢献しています。ウェルス・マネジメント企業、アドバイザー、個人投資家、デジタル投資商品やサービスのプロバイダーなど、業界内のあらゆるステークホルダーにさまざまな影響をもたらしています。
本調査は、金融アドバイスの役割がどのように進化しているか、経験が投資家の行動に及ぼす影響、投資における AI に対する考え方、サステナブル投資分野におけるギャップなど、幅広い質問について回答を依頼しました。
LSEG は、現在起きている変化をより正確に理解するために、詳細なリサーチの実施を支援しました。ThoughtLab が実施した本リサーチは、2 種類のグローバル規模のアンケート調査で構成されています。1 つは、投資家 2,000 名 (国、資産レベル、年齢、ライフスタイル、職業、ジェンダーなどの特徴を限定しない) を対象としたもので、もう 1 つは投資プロバイダー 250 社の経営幹部を対象としたものです。
LSEG は、グローバルなインサイトと結論とともに、地域別のインサイトを抜粋したものを用意しました。ここでは、アジア太平洋地域における 3 つの重要な情報について解説しています。
アジア太平洋地域における主なポイント
今回のリサーチにより、アジア太平洋地域(以下APAC)における3つの重要なポイントが明らかになりました。
1. APAC の回答者は世界で最も分散投資を行っている傾向にある
同地域の回答者は、4 社以上の投資プロバイダーを利用する傾向が他の地域よりも強く、4 社以上を利用していると答えた回答者の割合は、APAC が 32% であったのに対して、欧州・中東・アフリカ地域では 26%、北米ではわずか 23% となっています。
加えて、APAC の投資家は今後3年間に適切な分散投資が行われないことを懸念する傾向が最も高く、15%が懸念事項として挙げています。
2. APAC の回答者はプロバイダー比較に最も高い関心を示している
同地域の回答者の約 2/3(64%) は、今後 3 年間のうちに投資プロバイダーの乗り換えを検討しており、1/3 (33%) の回答者は、過去 3 年間で実際に乗り換えを済ませています。日本の回答者に至ってはこの割合がさらに高く、 39% に達しています。
市場のボラティリティが高まり、市場環境が複雑化した際に、「金融アドバイスへの出費を惜しまない」と回答した者の割合は、世界全体の平均値が 51% であるのに対して、APAC では 56% と最も高い数値を示しています。この APAC の回答者らは、機会があれば大手のリテールまたはテクノロジー企業を通じて投資を行うと回答しています。
3. APAC の回答者はプロバイダーに寄せる期待も大きい
同地域の回答者は他の地域の回答者よりも、デジタル・ネイティブの企業と遜色ないデジタル体験の提供をプロバイダーに期待する傾向が強く表れています。
3/4(75%) の回答者がこうした考えを示しており、中国の回答者に至っては、この割合が 82% まで跳ね上がります。これに対して、EMEA (欧州・中東・アフリカ地域) は68%、北米は63%と、やや低い割合でした。
さらに詳しく見てみると、投資商品を直接管理するための優れたデジタル・ツールの提供を求めている回答者は、APAC で最も多くなっており (62%)、日本だけに絞ると 68% まで上昇します。
信頼が重要な問題であることは、APAC でも強調され、72% もの回答者が、2030 年までに信頼性の高い金融ブランドを利用することが、定評あるプロフェッショナルなサポートを確保するために重要になるだろうと述べています。
APAC のデータ・セキュリティに目を向けると、中国の回答者の多くがデータ・セキュリティとプライバシー (61%)、金融関連の詐欺 (58%) について懸念しており、結果的に APAC の他の国々よりも高い割合を示しています (他国は前者が 49%、後者が 44%)。
業界関係者にとって調査結果が意味するもの
今回の調査によると、APAC の回答者は、資産管理について複数のプロバイダーを利用する傾向が強いということが示されました。回答者の多くは過去数年間にプロバイダーを変更しており、それよりも多くの回答者が、今後数年のうちにプロバイダーの乗り換えを検討しています。プロバイダーにとっては、APAC の投資家の高い期待に沿ったサービスの提供が必要だということが明確に示されたことになります。
現在利用中のアドバイザリー・チームが他の会社に移っても、引き続き同じチームの利用を検討している投資家の割合 (%、地域別)
このような投資家は、ボラティリティや複雑さが高まった場合には、金融アドバイスに最も積極的にお金を払う投資家でもあります。信頼性の高い金融ブランドが選好されていますが、これはアドバイザーとプロバイダーにとっては、ウェルス業界に信頼を求めるという消費者の要望に応えて、投資家が評価する信頼性の高いデータ、インサイト、アドバイスを提供する好機であることを示しています。
APAC においては、デジタル・ネイティブの主要企業が提供するものと遜色ないデジタル体験が強く求められている背景を踏まえると、自ら運用判断を下す投資家に合わせたサービスを提供するプラットフォームにも大きなチャンスがあります。企業は信頼性の高いデータと最先端のテクノロジーを提供し、シームレスなデジタル体験をもたらすことで、初めて APAC の投資家に選好されるのです。
本リサーチについて
本リサーチは、アジア太平洋、欧州、中東、北米の 4 つの地域をカバーしています。資産レベル別で見ると、最も割合が大きかったグループはマス富裕層 (25%) と富裕層 (25%) で、その次が超富裕層 (18%) でした。年齢別では、X 世代 (31%) のグループが割合として最も多く、次いでベビー・ブーム世代 (30%) が位置しています。
リサーチには、独立系のウェルス・アドバイザー、プライベート・バンク、地方銀行や国際銀行のウェルス・マネジメント部門など、さまざまなウェルス・マネジメント企業 250 社の経営幹部を対象としたベンチマーク調査も含まれています。
[1] 対象分野:プロダクトおよびサービスの調査、ポートフォリオ分析、アセット・アロケーション、タックス・ロス・ハーベスティング、ポートフォリオ・リバランス、取引執行、金融機関口座の一括表示、投資助言の利用、人生の目標に対するパフォーマンスの追跡、財務指標とのパフォーマンス比較、口座情報の確認、個人口座情報の更新など
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